45トン電車のあれこれ
17号電車のパンタグラフ
2019年6月6日公開
炭鉄本館
Pantograph of 17

 現在、三川坑跡に保存展示されている17号電車、直射日光や雨が当たらない配慮がなされているおかげで、車体や台車は良好な状態を保っていますが、ただ一点だけ、とても残念なことがあります。このことを指摘した人が見当たらないのが意外なのですが、それは運転室を見上げると、パンタグラフが完全に拉げており、不自然に凹んだ痛々しい姿になっています。17号電車搬入時のリポートを見ますと、パンタグラフは一旦外されて、改めて現地で設置されています。しかし、その際に破損したわけではなく、2016年春までの仮庫時代に既にこの状態になっていました。
 入庫前の17号電車の写真を見ると、パンタグラフは通常の畳んだ状態でしたが、その後の仮庫ではパンタグラフの下枠にロープを掛けて強引に引き下げていました。おそらく、仮庫に収納する際に、パンタグラフが天井に支障するため、通常以上に折り畳んだ状態にしたのではないかと思われます。ただ、写真をよく見ると、すでに部品がいくつか喪失しています。あえて取り外した可能性もあるかもしれません。

 17号機が将来、パンタグラフが修理されて、正しい姿となる期待を込めて、現役時代の17号のパンタグラフの写真を探してみました。また、幸いに同型の18〜19号は今なお現役ですので、両車のパンタグラフの比較を試みました。結論からいうと、17号と1819号ではパンタグラフとその周辺も含め、実は相違点が数多くあったという発見が得られることになりました。


(2016年11月)


(2016年11月)


(2010年11月)仮庫時代の17号電車。パンタグラフがロープで結ばれている。

(2009年11月)

 現役時代の17号電車です。上から撮った写真は見つかりませんでしたが、パンタグラフの形状が分かると思います。パンタ台は分かりにくいと思いますが、井桁となっており、次に取り上げる1819号と異なる部分のひとつです。

(1991年8月)パンタグラフが畳まれた状態。


(1992年8月)パンタグラフ台枠形状が独特。

(1996年2月)

 三池電車のパンタグラフの構造についてまとめてみます。細部では各号車で相違はありますが、基本的には共通な仕様となっています。9号電車を例に、おもに構造を見ていきましょう。

 パンタグラフの仕組みとしては、一般的なバネ上昇式といい、”主バネ”の弾力(縮む力)が”主軸”の回転となり、”下枠上枠”を立ち上げて、”集電舟”に付けられた摺板を架線に押し当てます。集電舟が1本式となのは三池共通。また、パンタグラフが前後に倒れないための”釣合棒”が前後の主軸を結んでいます。”舟支え”は集電舟の平衡を保つための仕組みで、このパンタグラフでは8本のバネが集電舟に掛かっています。パンタグラフが立ち上がったときには目立つ部品となります。この構造も三池共通。
 集電舟の両端の”ホーン”は、架線が集電舟の下側に回り込むの防ぐガイドとなる部品です。三池ではこのホーンが特に長く、特徴と言えるでしょう。
 パンタグラフを畳む時は、上端に繋がれたロープを引っ張ることによります。ロープは滑車によって運転室まで導かれていますが、固定はロープを結ぶだけとシンプルです。
 バネ上昇式は、正常ならば構造的にパンタグラフが自然に立ち上がる筈ですが、保存の17号電車のパンタグラフが落ちた儘になっているのは、主バネが壊れているのか、あるいは主軸に力が伝わっていないと思われます。また、舟支えのバネが全て無くなっているため、集電舟も傾いてしまっています。


(2016年11月)9号電車パンタグラフ。架線が煩わしいのでパンタ枠に掛かる箇所を写真加工しました。


(2010年11月)パンタグラフからのロープは運転室で固定される。

 続けて、45トン電車の現役、18号19号を見てみましょう。写真を見比べてみる限り、18号と19号、パンタグラフの形状はどちらも同じと思われます。17号と同様、主バネは4本ですが、台枠と、下枠の形状(1819号は2本組)が異なっています。また、パンタ台はレイル方向の2本で支えています。このパンタ台に隠れてほとんど見えませんが、パンタグラフの真下に枕木方向の2枚の台が見えます。これにアングル材が渡されて、パンタグラフからのロープを通す滑車が付いています。


(2011年11月)18号パンタグラフ


(2016年11月)19号パンタグラフ


(2009年11月)19号パンタグラフ

 ついでに、20トン電車のパンタグラフも気になったので、現役3台、9号11号12号のパンタグラフを見比べてみます。面白いことに3台ともパンタグラフの形状が異なっていました。

(2016年11月)9号パンタグラフ


(2016年11月)9号パンタグラフ。これでパンタグラフが畳まれた状態で、必要以上には下げないようだ。

(2006年3月)11号電車パンタグラフ。主軸の端部が9号電車と異なっている。またパンタ枠の補強は交差しない。

(2012年11月)12号パンタグラフ。台枠の形状は17号電車に似てるが、主バネは2本。パンタ枠の補強は交差している。



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