車輌のあれこれ
セ1026号
セ形
2021年4月15日公開
2021年4月16日付記

 セ1026号は、セ形最後の1両として鉄道廃止(1997年3月)まで在籍した車輌です。”九電ダミー車”と称して、九電港発電所内にて使用されました。そもそもダミー車とは何ぞや。港~四ツ山間にあった九電線は、貨車門から覗いても、大きくカーブしながら構内奥へ導かれていたため荷卸場の状況は見えず、詳細は分かりません。炭車移動に”キャプスタン”を用いるために必要との記事*1が唯一の説明ですが、具体的な使用方法は??後述するように、セ1026号には特殊な改造が施されていました。おそらくですが、ロープを仲介するための控車ではと想像するほかありません。この点は現場での証言を待ちたいところです。

 セ1026号は、まず竣工図表によれば、”国鉄”と付記があることから元国鉄セ50形10トン石炭車ということが分かります。三池では1948(S23)年6月竣工ですが、やはり元番号は不明です。下のイラストは竣工図表の数値をもとに描いてみたものです。セ1208号とは炭箱の大きさと形状は同じですが、全長が短く(マイナス563ミリ)、そのため端梁よりも炭箱が僅かにはみ出たスタイルとなっています。セ50形は系譜によっていくつかのタイプがあるため、車号との関係を下表にまとめてみました。全長(5195ミリ)と軸距(2896ミリ)という数値から、セ50形分類表によれば、テタ3400形(←タ701形)を系譜とするグループではないかと思われます。タ701形となると、1898~1899(M31~32)年の製造となります。

*1)『RM124』1994-1「孤塁を守る最後の運炭鉄道」秦野泰樹

M

形式 車号 両数* 形式 形式 形式
セ50 50~298 232両 テタ3000(10トン積み) テタ3000(9トン積み) タ1(6トン積み)
全長5549ミリ(軸距3480ミリ)
全高2651ミリ
全巾2041ミリ

セ50 299~373 64両 テタ3250(10トン積み) テタ3250(9トン積み) タ251(6トン積み)
全長5684ミリ(軸距3505ミリ)
全高2616ミリ
全巾2143ミリ

セ50 374~568 182両 テタ3400(10トン積み) テタ3400(9トン積み) タ701(6トン積み)
全長5195ミリ(軸距2896ミリ)
全高2642ミリ
全巾2248ミリ
*上記のセ50両数は1935(S10)年末時点

セ50 569~578 10両 西鉄糟屋線セ100
セ50 579~610 32両 西鉄糟屋線セ150
セ50 611~628 18両 西鉄糟屋線セ200
セ50 629~658 30両 西鉄糟屋線セ250
セ50 659~685 27両 西鉄糟屋線セ300
セ50 686~691 6両 西鉄糟屋線セ350
セ50 692~709 18両 西鉄糟屋線セ400
*1944香椎線←1942西鉄糟屋線←1920博多湾鉄道汽船←博多湾鉄道

セ50 710~735 26両 西鉄宇美線セ100
*1944勝田線←1942西鉄宇美線←筑前参宮鉄道

 残念ながら、わたしはセ1026号を実見出来ませんでしたが、1974年および、1997年の最終的な姿の写真をもとに、イラストに起こして考察してみたいと思います。不思議なのは、実車の写真を見た限りでは、上記イラストのような寸詰まりなスタイルではなく、セ1208号と同等のバランスとなっているように見えます。おそらくですが、導入当初のセ形は雑多であったものの、後年まで残った車輌については、更新によって統一化が進んでいたのではないかと推測します。例えば、同じようなケースとしては、ハト形にも見られます。

 下のイラストは、2015年の大牟田石炭館『夏の鉄道展』の展示より、YM氏による1974(S49)年撮影のセ1026号を描いてみたものです。時期的には九電ダミー車となる以前の姿ということになります。車体寸法はセ1208号に倣いましたが、よくみると側枠中央に突起物があることに気付きます。この突起は”C”の字を横倒しにしたようなフックとなっており、わたしの知るかぎりセ1026号以外には見当たりませんでした。また、セ50形にも無い装備です。


車体寸法をセ1208号に合わせました

 1997年3月の鉄道廃止により、九電から三池港駅に返却された時の写真が残されています。これは毎年11月の炭鉱電車一般公開で展示されていたものですが、あまり話題にはなりませんでした。車輌背景からすると、港駅側(九電内では奥側)の端梁周りに付属品が付けられています。ただし写真は、肝心の改造側からは撮っていないため、装備の詳細はよく分からないのが残念ですが、かなり大掛かりな”ロ”形をした枠のようなものが付属しています。また、荷重表記等は無くなっていますが、開戸装置は残っており、何故か黄色に塗られていました。それにしても、九電線は1983(S58)年よりの輸送開始ですから、それまでにセ1026号がよく残っていたものです。

 セ1026号は、元セ50形という経歴からすると、原型は明治年代に製造され、平成まで現役でしたから、ほぼ100年間稼働したということになります。当時はその価値もわからず、このまま現地解体されてしまったのはつくづく惜しいことだと思います。



 <付記>
 上の記事をアップ後、ダミー車についてヒントとなる情報を頂いたので、これをもとに考察を加えてみたいと思います。
 ①セ1026号は港側端梁に”ウインチ”を装備。
 キャプスタンというと、地上側の設備のように思われがちですが、車輌側にウインチを載せていたのは意外でした。詳細は不明ながら、電動ウインチなら電源(バッテリー)も積んでいたのでしょうか。
 ②九電内では、ダミー車によって炭車を推しながら荷卸しを行った。
 ウインチを牽引ではなく、推進として使っていたのも意外です。九電内での目撃情報ではありませんが、以下、入線から荷卸し作業の流れを想像してみました。無論、まったく違っているかも知れませんが。




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